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保志総一朗

SPECIAL

保志総一朗 アニバーサリーライブ「Voice and Harmony」レポート

 今年、声優活動25周年を迎え、自身の誕生日にあたる5月30日にクロニクルベスト盤を含む2枚組アルバムをリリースした保志総一朗が、8月19日、豊洲PITでアニバーサリーライブ「Voice and Harmony」を開催。
保志の音楽活動を語る上で欠かせないアーティストである酒井ミキオが駆けつけ、また、まさかのキャラクターソングを披露するなど、サプライズも盛りだくさん!
3時間を超える大ボリュームで、この日を待ち望んだファンとともに、祝祭の一夜を過ごしたのだった。

 ステージ全面に映し出されたのは、稲妻が走る大荒れの光景だった。だが、やがて雨露が輝く穏やかな朝を迎え――。「はじまりの呼吸のハーモニー」という晴れやかな歌声とともに紗幕が落ち、生バンドを従えた保志が姿を現した。
「みんな、おまたせー! アニバーサリーライブの始まりだ!」。
湧き上がる歓声の中、トップを飾るのはアルバムの1曲目でもあった≪Harmony ~夢のチカラ~≫。
明るくポップな音にのせ、保志の弾けるような歌声とファンのコーラスで、会場が一つになっていく。
その勢いのまま「ヘイ! ヘイ!」と拳を突き上げ、打って変わってパワフルな歌声を響かせた≪Crystal Blaze≫。いきなりフルスロットルといえる立ち上がりに、本人も「完全燃焼」してしまったらしく、最初のMCから「ここが始まりなのか、終わりなのか……」と迷走を覗かせていたが、いつものように「ぱっぴぃ~!」という挨拶を交わし合うと、2年ぶりとなったライブが楽しみでたまらなかったという思いを伝えた。

 ライブの醍醐味は、やはり生演奏だろう。さっそく、現在へ至る音楽活動の原点といえる『ロスト・ユニバース』のケインのキャラクターソング≪again≫が、バンド形式で初披露されることとなった。
続けて≪LUNATIC CRAVE Refrain≫。一斉に赤く点灯するペンライトの景色が会場の温度を上げる。照明の躍動感あふれる演出と、激しいギターソロが煽り立てるロックな楽曲にも、保志はソリッドな存在感を放っていた。「やろうぜ」という生セリフにも痺れる。
優しいピアノの旋律から、やはり激しく壮大に展開していく≪ストレインジャー【eternal remix】≫。青と白の清廉なライティングと、ヴァイオリンの音が旅人の物語を彩った。
そんな荒々しさの一方、≪恋花の涙≫では、哀切を帯びた歌声で悲恋をしっとりと歌いきる。
また、自身初の作詞曲として刻まれる≪綺羅星≫が掛かると、ペンライトが青い銀河を作り出し、星の軌跡がごとく歌声が輝くのだった。

 今回のライブのテーマを「休む」とし、適度に給水タイムを設けながら進行していた保志。だが、それと同じくらい「楽しむ」も大事だと言い切る。
「今日の〝発表会〟に向けて必死に準備してきましたが……できなくても、楽しみたい! そんな気持ちで頑張っております」。
そのガッツが十分に伝わっていることは、客席からの盛大な拍手で明らかだ。

 完成したばかりの新曲≪DESIRE≫では「テンション上げていくよ!」と腕を振り上げて会場の士気を高めるとともに、ハイトーンの裏声で酔わせた。
曲が終わるやいなや、客席からもたまらず「カッコイイ!」という叫びが起こる。日常ではなかなか言われることのない賛辞だけに、気を良くして「(保志が)カッコイイ派の人? カワイイ派の人?」と手を挙げさせ、無邪気にファンと戯れる場面も。

 アルバム未収録の楽曲による、バラードコーナーへ。親交の深い林原めぐみが「MEGUMI」名義で歌詞を提供した≪いつのまにか大人になった僕ら≫も、バンド体制によって、より、ぬくもりのある印象を残す。
一変して、≪残酷デ哀シイ彼女≫では、深く哀愁のある歌声で孤独を聴かせる。
さらには、暖かなオレンジの光の中、≪しあわせのあるところ≫で、愛に満ちた人生賛歌を響かせた。
そして、ゆっくりとステージ袖に歩いていく保志を見守り、バンドは≪One Song≫のインストを奏でるのだった。

 後半戦、オリジナルのワッペンのついたベストがポイントの衣装に着替え、ステージ後方から再び登場した保志。
≪ヒカリ≫のイントロを歌う中「今日だけの特別バージョンで行ってみよう!」と告げたかと思うと、なんと、楽曲を提供したアーティストの酒井ミキオが登場!
2人でしかありえない情熱的なデュエットで、このダンサブルかつメランコリックな「ミキオ節」が炸裂する名曲を歌い上げた。

 そして、ミニトークショーと言っても過言ではない、濃いMCへ。2001年に放送されたアニメ「スクライド」を通して出会った2人。その縁は『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』にて制作された保志と緑川光のデュエット曲「Reason」の〝裏テーマ〟にもつながっている。最初に「ヒカリ」のデモ曲を聴いたときに入っていた酒井の仮歌に衝撃を受けたという保志は、いつかそれをみんなにも聴かせたかったのだと言って、願いが叶ったことを喜んだ。保志に促され、酒井から「ぱっぴぃ~!」が飛び出したのも面白い。
 「今度は逆に、僕が酒井さんの曲に参加したい!」ということで、選ばれたのは「スクライド オルタレイション QUAN」のED主題歌≪SPIRITS≫。2人の熱く吠えるような歌声に牽引され「ハッ、ハッ!」と会場中が天に向かって拳を突き上げる。「ス・ク・ラ・イ・ド!」と声を合わせたフィニッシュは、圧巻だ。ハイタッチを交わす姿も、清々しかった。

 火が付いた保志は、止められない。イントロからドラマチックで、ラテン語のバックコーラスが深みを与える≪白翼のデュアレクス dur.≫。その歌声は大空へといざない、包み込むように大きくもある。
≪Brave Heart ~輝きの彼方へ~≫では「ギター、ヴァイオリン……みんなー!」と客席にマイクを向けて煽った。
攻めの2曲が続き最高潮に盛り上がる中、次の曲が最後であることを伝えると、当然、会場からは「えーっ!」と、あらがう声が聞こえてくる。その気持ちは、保志も同じ。いい感じの音を鳴らし始めるピアノを制止して、ダダをこねるようにしゃべり続けるのだった。
 「『Voice and Harmony』は、僕の過去と今を集め、そこから未来を思い描いていただけるといいなと思って作ったアルバムでした。歌であれ、声の仕事であれ、人生であれ……〝声と調和〟を、これからも追い続けていきたいと思います。この曲は、25年間声優をやってきた自分自身と向き合い、それを支えてくれるみなさんにも感謝のできる、いろんなものがつまった曲です」
 そして歌われたのは≪VOICE OF BIRTH≫。息を吸い込むブレス音すらも愛おしい、優しい空気の中、「あなたへ」と語りかけるようなフレーズとともに客席を見回す保志の微笑みが目に焼き付いた。

 鳴り止まないアンコールの声に応え、バンドが「again」を演奏する。そこへ、これまで保志が演じてきたキャラクターたちの〝声〟が、次々と聞こえてきた。まるで、彼を祝福しに来たかのようではないか。胸熱くする名言、思い出す胸のときめき、つい笑ってしまうもの……。あらためて、重ねてきた年月を思い起こさせるひとときだった。喝采の中、水色のライブTシャツで登場した保志は「どこかで聞いたことがあるような声だったねー」と、照れ笑い。そこで、なんとキャラソンメドレーとして、3曲を披露。中でも「機動戦士ガンダムSEED」より≪今この瞬間がすべて≫にはひときわ大きな声があがり、キラ・ヤマトという存在の大きさを伺わせたのだった。

 前半のMCでも「いろんなキャラクターたちが、みなさんに愛されて、僕の中で生き続けています。たまにどこかへ行っちゃうけど、呼べば戻ってきたりして(笑)」と、キャラクターたちとの「良い距離感」を語っていた保志。「キャラクターたちを好きになってもらえて、ここにいます」という言葉も、感動を呼んだ。
 「どちらかというと〝後ろ向きでじれったい〟感じだった僕が、歌に積極的になるきっかけをくれたのは『遙かなる時空の中で』シリーズでした。歌う機会をたくさんいただく中で、楽曲の良さを味わったり、その楽しさを教えてもらったんです。最近では、アイドルを演じるだけでなく、大きなステージでパフォーマンスまですることになって……。そんな〝まさか〟が起きるのが声優の仕事の面白さですね」
 その言葉に次いで「一人でも、歌っていいかな?」と言うと、察した客席から悲鳴が起きる。ピンクと黄緑色のペンライトへと景色が変わった。『アイドリッシュセブン』より「Dis one.」。生バンドでの披露は、本邦初だ。保志とともに、ジャンプする一体感が爽快だった。  途中、ファンと一緒に楽しい時間を過ごす幸せを噛み締めていた保志が「みんなも実感しますか?」と言い出し「それじゃあ行くよ、3、2、1……実感」と、カウントダウンとともに胸に手を当てるという新しいセレモニー(!?)も。
この、予測不可能なピースフルな瞬間こそ、保志ならではのライブの楽しみだ。

 軽やかに自分らしさを歌う≪ファイティング!!≫といったアンセムも、前に手を突き出し応援団のような振りが加わるなど、確かにアップデートされていた。
≪希望の花 ~Acoustic Ver.~≫では、未来へと続く道を拓くように、優しくも力強い歌声を聴かせた。
 「声優として25年というのは、決して長いものではありません。いつまでも若い役……というより、いつまでも熱い役をやれるように! みんなに愛される役をもっと、もっとやっていきたい! 気力を持ち続けて、頑張ります」
 音楽活動についても、会場中からの「聞きたい!」という声を受け「じゃあ、頑張ります!」と気持ちをあらたにしていた。

 「最後、みんなで一緒に歌おう!」という言葉とともに、≪Shining Tears≫の繊細なイントロが爪弾かれた。リリースから14年が経つ自身最大のヒット曲も、変わらずにピュアな純度を保ち続けていることに驚かされる。
ここに集まった人たちは、この25年の間に、彼とどんなふうに出会い、どんなふうに力づけられてきたのだろう?
そこに広がるのは、保志の声が、ファン一人ひとりの思いと溶け合っていく――まさに「Voice and Harmony」という空間だった。

 会場中に「ありがとう!」と手を振り続けていた保志。
最後に、別れがたい気持ちを吹き飛ばすべく、特大の「ぱっぴぃ~!」を交わし合い、この特別な一夜は幕を下ろした。
こうして「声優活動25周年」の節目に、あらためて、歌うことの楽しさ、ファンとの絆を確かめることとなった保志は、また、新たな地平に向かうのだろう。
ときに雨風に吹かれながらも、路辺に咲く花に心動かし、自身から生まれてくるメロディを口ずさんで。
これからも、その温かな歩みを追いかけていきたい。

セットリスト
M1:Harmony ~夢のチカラ~
M2:Crystal Blaze
M3:again(TVアニメ『ロスト・ユニバース』キャラクターイメージソング)
M4:LUNATIC CRAVE Refrain
M5:ストレインジャー 【eternal remix】
M6:恋花の涙
M7:綺羅星
M8:DESIRE
M9:いつのまにか大人になった僕ら
M10:残酷デ哀シイ彼女
M11:しあわせのあるところ
M12:ヒカリ(ゲーム『シャイニング・ブレイド』挿入歌)
M13:SPIRITS(劇場用アニメ『スクライド オルタレイション QUAN』ED主題歌)
M14:白翼のデュアレクス dur.
M15:Brave Heart~輝きの彼方へ~(ゲーム『ブレードアークス フロム シャイニング』主題歌)
M16:VOICE OF BIRTH
<アンコール>
EN1:キャラソンメドレー
Catch your heart!?止まらない、オレの想い?(『ボーイフレンド(仮)きらめき☆ノート』より)
光射す先へ(『花咲くまにまに』より)
今 この瞬間がすべて(『機動戦士ガンダムSEED』より
EN2:Dis one.(『アイドリッシュセブン』より)
<ダブルアンコール>
WEN1:ファイティング!!
WEN2:希望の花 ~Acoustic Ver.~
WEN3:Shining Tears(ゲーム『シャイニング・ティアーズ』OPテーマ)