KING AMUSEMENT CREATIVE | SONIC BLADE

小猿日記
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「ウカウカしてたら見逃した」

 この日、コザルが1時間遅くスタジオに到着すると、丁度Aパートのテストが終了し、ブースでは音響監督のたなかかずや氏が自由やフリーシャの演技指導に飛び回っているところでした。おはざるこはざるでございまーす、今日も見学させてくださーい。と呑気に入っていったコザル、前方のスクリーンを見て凍りついた。ぎゃっ、怖いっ、何あれ!?四郎&ハジメが映っているスクリーン。あのハジメのバックにいるのはだれでヤンスか?複線チームゆえまだ映像を観ていなかったコザルは、彼が何かの地縛霊にとりつかれた話かと本気で思った。まさか、またまた太鼓太夫?
しかしそれはハジメの部屋に貼られたポスターであった。台本ト書きには「ハジメの部屋アメリカンルーム」・・・・アメリカンだったのか。描いたのは長濱博史チーフディレクター。力作である。力作すぎである。それが演技指導中ずっと静止しているのである(しかも大画面っ)。こ、こわいよお。早く変わってこの場面。はやく終わってかずやさん。
 極力スクリーンから目を遠ざけながら、本日のキャストさん方にご挨拶。わお、スタジオに咲く可憐なひなげし、マドンナ安原麗子さんではありませんか。そうそう今日から御影さんが出るんですよね。楽しみです!彩夏ちゃんも相変わらずのヒマワリパワー全開!そしてゴロゴロ群れるマリモのようなシベリア柳生の兄貴たち、相変わらずのリラックスだあ~!
和やかに挨拶を交わしている間に演技指導が終わり画面が巻き戻されます(嗚呼こわかった~)。

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 さあAパートの本番がスタートしますよっ!先週最後に現れた謎の白装束の剣士と自由十兵衛の決戦。「お主は一体何者。何ゆえにわたしが継ぐべきラブリー眼帯を持っておる。」と中山恵里奈ちゃん。「声を張り上げるのではなく、淡々と呟いてみて。かえって殺気が込められるから」と音響監督がアドバイスをしていきます。恵里奈ちゃん、先週の初日よりもぐっと凄みがまして、お腹の底から声が響いてきています。そんな剣士の気迫に押され、劣勢の自由十兵衛!振り回される自由、木に激突し鈍く呻く自由!
 木にぶつかる瞬間、上げていた握りこぶしを振り降ろし、「ウッ」と重い「息」の芝居を入れる堀江由衣さん。堀江さんは常に、マイク前で最大限に身体を使って演技をしているので大変勉強になります。見習わなくちゃ!バンカラトリオもいつ戦いに出るか分からねえでヤンスからね。
 気を失った自由の服を剥ぎ取る剣士!「この「ない」というセリフには思いきり恨みをこめて」とかずやさん。「この一言に憎しみも何もかも詰め込む感じでね。」マスクの奥で歯がみするような悔しさを表す一言。何度かテイクを重ねた後にOKが出ます。

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 そして場面は変わって自由の家。傷ついた自由を介抱したフリーシャとの会話へ。
ひたすらに気遣いを見せるフリーシャに自由がいう「ケンチャナヨー」とは韓国語で「大丈夫」という意味。自由は最近韓国語に凝っているという設定があるのだ!『1』の第9話で四郎の「隣の席の人」が「ケンチャナヨー」と去っていく場面がそういえばあったあった。うん、あの時から自由は目覚めたのかしら・・・速記の方じゃなくて(笑)。
そんなカラ元気を見せる自由に対し、フリーシャは「ロシア語で「ケンチャナヨー」は「スパコイナ」だよ。」「わたしがいるから大丈夫、スパコイナ、スパコイナ」と繰り返します。実はこの「スパコイナ」、『2』の大切なキーワードなのでヤンス。これも流行るといいけどな~♪
 さて国際派の二人と入れ違いに登場するシベリア柳生の面々!!先ほどから「な、なんかのう、胸がのう」とか「ぼんぼーん」とか虚ろ、いや真剣な目でリピートし続けていたシベリア柳生衆。そう、こんな笑っちゃうセリフでも練習中は皆さん超マジなのです。「あ、ムッシュタカハシ、そこだけラップにして」と言われ「な、なんだYO、それYO」と唄う川鍋さん。「何で俺だけラップなんだろう・・・」ボソッと悩むタカハシ。ええ、でもそんなこと言ったら筆ペンだってCGだっていますから、ポンポン。
練習の甲斐あってシベリア柳生はさくっとOK!さすがっ息はバッチリですねえ。

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 ゆきつ戻りつ進んでいくAパート、終了間際に麗子さんがすっとマイク前に立った。
前作ではパパ彩に恋の魔法をかけてしまった罪つくりなくの一忍者、御影さんの登場です。今回は一体どんな役どころ?それにしてもこの麗子さんのおしとやかさ、見習わなくちゃ!
Bパートは御影さんと自由の掛け合いから始まります。ほっちゃんの可愛らしい透明な声と、麗子さんの落ち着いたしっとりした声がいいコントラスト!ここにパパさんが加われば完璧!こーほりゃまいったね~っす!
 そんなたおやかな麗子さんからは、想像できない「熱い、熱い」のセリフ!「御影、『1』でさんざん練習したことを思い出して。全身火だるまになってるからもっと苦しんで!」と指示が飛びます。煉獄の炎に焼かれる御影、「ぐわゃぁあああああ」と喉をふり絞るような麗子さんの声!「いい感じだから、そのままもっと長く苦しんで!」あ、コザルも苦しくなってきたでヤンス。で、でも見習わなくちゃ。バンカラトリオもいつ火だるまにされるかわからねえでヤンスからね・・・。
 そして恵里奈ちゃんが再びマイク前に。月光ふりそそぐ断崖に降り立った謎の剣士(実はフリーシャ)を孤独に演じます。「パーパ、パーパの剣を継ぐのはこのわたしでしょ。」というモノローグ、台本では「パパ」と書かれていましたが、この場で「パーパ」に変更されました。ロシア語では普通でもパーパと発音しますが、確かにこの方が父親を慕う気持ちがぐっと強く感じられますよね。フリーシャの心の中にある父とのわずかな想い出。幼いフリーシャを膝の上に乗せた十兵衛との心あたたまる切ないシーンです。登場以降、殺気に満ち満ち闘いを挑みつづけてきたフリーシャが、ここで初めて静かで寂し気な顔を見せる場面でもあります。
 ラストでは、先週一息しか入れていない彩夏ちゃんがマイク前へ。ここに至り初のセリフが入ります。「小田豪鮎之介・・・で・・ござる。」たどたどしく、かすれるような声で自由に語りかける鮎之介。その小さい手にはラブリー眼帯が握られています。この少年は、一体・・・・!?

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「はい、本線以上です。お疲れさまでした!」と声がかかりました。緊張が解け、帰り支度に賑わうブース。ふーっ、今日もおかしかった。いやあ、よく眠れそう~。
 その時、満ち足りた気分のコザルを奈落に突き落とすような大地監督の言葉が飛び込んだ!
「あっ、今日ノルシュテインさん来たよ。」
「う、嘘でヤンショ・・・」コザルは絶句した。
「え、い、いつ?どうして来ること教えてくれなかったんでヤンスすかァ(涙)!」
興奮のあまりしどろもどろになるコザル。「君が来る前にね。しょうがないよ、急に決まったんだもん。」と監督。「それにこの時間、間に合わなかったでしょう。」ニエット!何をおいても駆けつけたでヤンスよォ。ああ、こんなことならモタモタしてるんじゃなかったァァァ~。
「ノルシュテインさん」とはロシアのアニメーション作家のユーリ・ノルシュテイン氏のこと。現在、世界的に尊敬と注目を集めておられ、作品も数々の賞を受賞されている芸術家です。氏が紡ぎ出す美しい映像の繊細かつ詩的な世界に魅せられ、日本にもたくさんのファンがいらっしゃいます。そんな素晴らしい方にお会い出来る絶好のチャンスを逃すなんて!あーあオイラのバカバカあっほ~ま~ぬ~け~!!

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 ところで監督ゥ、そんな凄いお方が『十兵衛ちゃん2』のARに一体何しに来られたんでヤンスか?・・・ふむふむ・・・・・な、何ですと!?「右太衛門様」の声をアテに来られたぁ!?
「右太衛門様」とは『十兵衛ちゃん』シリーズに出てくるマスコットキャラクター。
本編にさりげなく登場するばかりでなく後提供でも大活躍の2頭身のサムライ!毎回エスカレートしていく謎の行動が楽しみで、コザルも第1シリーズでは大隈甚佐さんに次いで好きだったなあ‥‥‥。はっ、今はそんなこと言ってるばあいじゃねえでス!
そんな面白キャラの声をこの偉大な芸術家にお願いしちゃっていいんですかっ監督!?
「いやあ、俺もまさか本当にやってくれるとは思わなかったよ、ハハハ」
「ハハハ~~」じゃねえでヤンスよぉ~!力さん、目黒さんにひきつづきノルシュテインさんまで。なんちゅう豪華キャスティング!一体どういう経緯でこの役を引き受けてくださったんでヤンスか?コザル、悔し涙を拭って大地監督にお話を伺いました。
 話によると『十兵衛ちゃん2』でロシア語指導をされている児島さんがノルシュテイン氏の通訳もされており、初打合せの際に「ノルシュテインさんの声ももらってきましょうか?」なんて冗談話になったということです。これは面白い、とたなかかずやさんに話したら「右太衛門さんやってもらいましょうか。」という話になったそう。
そんなこと思い付くかずやさんもかずやさんでヤンスよぉ。

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 しかしあくまで半信半疑でいた監督。約束の今日まで音沙汰がないままにスタジオに到着したところ、何とすでにノルシュテイン氏は打ち合わせに入っていたということ。本当はAR現場の見学の予定だったようですが、声も録ることになったそうです。
 「俺がスタジオに入ったらノルシュテインさんがめちゃめちゃ真剣な顔してメモをとっていたんです。で「ないすちゅーみーちゅー。」って挨拶をしたら「スパシーバ(ありがとう)」と返ってきたので、さらに「カムサムニダ」って握手を求めたら、彼はそこそこに俺の手をとったと思うと、すぐに目を伏せてさっさと打合せに戻っていったんです。俺、カヤの外かよっ!(笑)」ははっ非常に集中してくださっていたのですね。そしてノルシュテインさんがブースに入り、右太衛門様ARが始まります!
「録ってみて驚きました。声もいいしテンポもいいし、めちゃいい!最初は喋っていただいたロシア語に字幕をつけようと思ったけど、もう何もない方がかえって面白いだろうなって(笑)」
 第一声を出した時に、彩夏ちゃんが、「なんだいまのは、なんだいまのは」と動揺した反応がめちゃくちゃ可笑しかったそう。「それくらい俺たちも皆にもカルチャーショックでした。あまりに面白いので、用意していた右太衛門様のセリフ以外にも急遽リクエストをし、「車がとおるエンジンの音」「ふるえている声」「高笑い」「普通の笑い」「ためいきついた笑い」など色々録りました。本線なかったら一日これやって過ごしたいなと思ったくらい(笑)。もうこうなったら後提供の「次回お楽しみに」もやってもらおうと。最終回用の「ユーリ・ノルシュテインでした、ありがとう。」も録ったよォ。」早っ(笑)!「一時間くらいARをした後、「ウオッカがあればもっとできるんだけどね」といいつつ彼は帰っていきました。で、俺は思ったね。・・・あれ、アフレコ・・・見てかないの?」
あははっ、もう満足してしまわれたのですね。見学よりも出る方が断然面白いですからネ。

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ノルシュテイン氏を招いた「ふゅーじょんぷろだくと」という出版社の社長さんが「ユーリをこんなくだらない役に使ってくれて最高だよ(笑)」と喜んでくれたのが何よりだったという監督。「実は1話の見ごたえのシーンはEDのテロップだと思う。
竹内力さん、目黒祐樹さん、ユーリ・ノルシュテインさんが並んでるんだからね。世界でも類をみない瞬間ですよ。やはり名だたる作家と呼ばれる方は芸もできる。それを起用させて頂きとても良かった。あの姿は本当に大御所中の大御所でした。」氏はロシアのCMでもやはりご自分で演技をし、ご活躍されているそうです。しかしこのキャスティングは大反響ですよきっと。特にアニメ関係者の方々はびっくりするのではないでしょうか。
「ノルシュテイン氏は俺の師匠の鈴木伸一先生が大尊敬している方。俺は師匠に怒られるんじゃないか。俺のノルシュテインさんを台無しにしやがった、けしからんと(笑)!今度あったら怒られます。あの高畑勲さんも尊敬していらっしゃる方ですから。あらゆる先輩作家陣の頭をかすめてこんな形で使ってしまったのですが、快く出演してくださったノルシュテインさんは素晴らしい。そういう意味でも彼を尊敬します。」もうホントよくぞ引き受けてくださいました。最高の右太衛門様ですヨ!では最後にノルシュテインさんに向けてひとことお願いしまーす!「この御礼はどっかで返したいね。俺もノルシュテインさんの作品で声出すわ(笑)」ありがとうございました~!!シメは大地監督らしいユニークな一言でヤンした。
それにしても驚いた。こんな面白いところを見逃すなんてレポーター失格でヤンス・・。

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「いやあ~良かったよぉ。来れば良かったのにィ」と落ち込むコザルにさらに追い討ちをかける大地監督。「十兵衛ちゃん2、何が起こるか分かんないよ~。俺たちだって分かんないくらいだから」とニヤリ。そ、そんな傷口に塩をっ。でもその通りでヤンス。何も起こらないわけがないのにうかつだった!!しゅぼん。今後は不測の事態に備え、ARの始まりからスタンバイしようと固く決意をし、とぼとぼと帰途へついたコザルであった。ああ、悔しさと期待で眠れねえでヤンス~!!・・・・
ZZZZZZZZZZZZ
ということでめでたく第2話の本線も終了。またもや濃密な一日を過ごしたのでした!
ノルシュテインさん、お疲れさまでした。本当に有り難うございました。来日の折にはどうぞまた遊びに来てくださいね!
そしてこれを最後まで読んでくださった皆さまもありがとうございまし・・・
っえ、何なに?ファンの方々はひょっとして右太衛門様のセリフの日本語訳を知りたいのでは?ん~なるほど!それは確かにそのとおり!これはね、ちゃんと台本には書いてあるんですよ。もちろん発表するつもりでヤンスよぉ~~!・・・・・・でも、塾の後でいいでヤンすかね?
ではでは今日のところはダスヴィダーニャ、スパコイナイノーチ!!

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(C)大地丙太郎・マッドハウス/j2製作委員会