――この作品をどのようにアニメにしようと考えられましたか?
シリアスな面もある作品ですが、可愛い三姉妹との生活を描くという、ある種の夢物語として楽しんでもらえた方がいいはずだ、という考えがありました。
たとえば打ち合わせの初期には、毎回家計簿を出して生活費の収支を見せていこうか、という案もあったんですが、そういうことが求められている作品ではないですよね。
両親がいなくなってしまうという重い展開がある分、地に足がつきすぎると更に重く見えてしまう。
現実的にどうなのかということより、ドキドキ感やハートフルコメディに重点を置くべきだと思いました。
――ではそのハートフルな面は、どう描こうと思われたのでしょうか。
ひなの可愛さ、美羽の可愛さ、空の可愛さはそれぞれ違いますよね。
そこを日常の中でこまかく見せていければ、それだけでアットホームな楽しい雰囲気は成立すると思っていました。
たとえばひなはおとなしくしてくれないんだけど、だからこそすごく可愛いわけで、そんなひなとのバランスで空や美羽が引き立っている部分もある。
ひなが泣いたら空がなだめて、空が落ち込んだらひながなごませる、みたいな。
真ん中の美羽はちょっと大人びているけど、ふとしたときに見せる子どもっぽさがまたぐっとくる。
この配置がすごくよくて、きっと一人一人だったらここまで際立たないんじゃないかなと思います。
だから原作で既にできているキャラクターの魅力に乗っかって、自分としてはみんながちゃんと印象的になるよう、出番や見せ方に気を遣いました。
――荒川さんが父親としての目線で見たとき、一番気になる子は誰でしょう。
そういう見方だと空でしょうか。これは美羽もそうですが、空はいい子にしているけれど、その分我慢しすぎるところ面があって。
抱え込んでどうしようもなくなる前に、適度に息抜きしてほしいなと思いながら脚本を書いていました。
それにあの年代特有のことでもあるんでしょうけど、空はストレスがたまると祐太に対してツンツンしちゃうじゃないですか。
でも可哀想だけど、祐太は空に対して恋愛感情はない。いろいろと応援したくなるタイプですよね。
――では祐太については?
自分にも経験があるのですが、あの年頃に特有の、自分ではやっているつもりでもそんなにできていない、周りが見えていないから地に足がつかない感じ。そんなところが出ていますよね。
だから自分としては、空たちと同列で子供のひとりとしてとらえています。
だって大学生ってまだ子供ですし、自分の息子でもおかしくないくらいの年頃ですから。
だから祐太には、「ここは乗り越えてくれ」という気持ちで、作中でもいろいろな試練を課しています。
はっきり言って、大したことは出来てません。でもそれでいいんですよ。
周囲に助けられながらでもそれらを乗り越えて、「自分は何ができたんだろう」って自問しながら、少しずつ前に進んで成長していってほしい。まさに父親のように、温かく見守っています(笑)。
――ではロ研のメンバーはいかがですか。
みんなインパクトが強いので、それほど出番がなくても十分に目立つなと思っていたんですよ。
特に佐古は、インパクトが強すぎて、あんなに出さなくてもよかったかなと(笑)。
莱香さんはああいうひとだから、たくさん出てくればその分だけ面白くなるのですが(笑)。
本当は仁村ももっと出したかったんですけどね。まだ謎が多いキャラクターなので、掘り下げたら面白いだろうなとは思ったのですが、美羽とデートをする回で少しそこの補完はできたかなと思います。
――この作品のテーマに家族愛があると思います。荒川さんは「パパ聞き!」の家族愛について、どうお考えですか?
家族って、やっぱり何かを共有してるという感覚が大事なんじゃないでしょうか。
だから一緒にいることのよさを常に見せていくというよりは、何かの折に「あぁ、家族っていいなあ」ってしみじみ感じられる。
そんな関係性を見せていけるのがいいな、って思っています。
空は最初は「三人一緒にいたい」と言いますが、それがだんだんと「四人一緒がいい」と感じるようになっていく。
この変化は、ひとつの見どころだと思います。
裕太たちがどうやって絆を強めていって家族になっていくのか、家族愛を育てていくのか。そういう楽しみ方をしていただけるとうれしいですね。