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第21話および第22話に登場する黒部峡谷。劇中では、この地に発電所を建設するにあたり、その作業を行うロボットを選ぶため、ロボットによる黒部峡谷登頂レースが行われる……。実際の歴史においても、ちょうどこのころ(昭和30年代)に黒部峡谷で、新たな発電所が建設されている。そもそも、この黒部峡谷に最初の発電所が作られたのは、昭和2年のこと。黒部川の下流に柳河原発電所という発電所が作られ、つづいて昭和11年には黒部川第二発電所、昭和15年には黒部川第三発電所が作られ、戦前、戦中における国内の電力供給において、この黒部川発電所は大きな役割をはたしていた。
戦後、まもなく復興が始まると同時に電力供給源の不足が浮き彫りとなり、日本は電力不足に悩まされることとなった。
そんな中、黒部川に新たなる発電所を建設する計画が持ち上がり、昭和31年6月には、長野県の大町市に建設事務所を設置。黒部川第四発電所の建設計画がスタートするが、建設資材の輸送ルートが問題となる。劇中における日本とは違い、当時の日本にロボットなどあるはずもなく、当初は富山から立山を人力や馬で越える「立山ルート」と呼ばれるルートが主な資材の輸送ルートだった。当然、このような貧弱なルートでは大量の資材を運搬できるはずもなく、新たなルートを作るため、後立山連峰赤沢岳から、建設地点に至る「大町トンネル」が作られることとなった。このトンネルの工事自体、難度の高いもので、昭和32年5月には大量の地下水が噴出し、工事中止の危機を迎えた。地下水噴出により多くの犠牲者を出しながらも、この危機を地下水を流すためのトンネルを掘ることで解決し、昭和33年5月、ついに「大町トンネル」は完成。輸送ルートが確保されたことで、黒部川第四発電所の本格的な建設作業もスタートし、昭和37年には、黒部川第四発電所および黒部ダムが完成したのである。
これにより日本の電力事情は大きく改善され、前回のコラムでも解説した高度経済成長を大きく助けることとなったのである。
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