「オオヒラメグロでリキだった」
もはや、タイトルこれ以外は思いつきません(笑)。9話はストーリーもガラリと雰囲気が変わり、300年前の世界が繰り広げられます。現代になお恨みを残す喜多歩郎の謎に迫るため、時をさかのぼるこの回。果たしてはるか遠い昔、彼等に何があったのか。
この日、柳生十兵衛役の目黒祐樹氏、柳生喜多烈斎役の竹内力氏、そして初登場、柳生但馬守役の大平透氏が一同にスタジオに会しました。これだけの(ジャンルも違う)大物が揃うということで、大地監督、たなか音響監督、長濱博史チーフディレクターをはじめ、スタジオ全体が緊張と興奮の熱気に包まれていました。三氏もそれぞれが初対面でしたので(1話は抜き録りでしたから)、ロビーで挨拶を交わされた後、ブースに入ります。
早速、大地監督が今日の概要の説明を始めます。「何しろ恨みを抱いたまま、300年間きちゃったものですので、今日はそこへ戻って完全な時代劇の世界をやるんですね。前回1話の時も300年前なんですが、あれよりも何年か前、侍だったころの話です。キャラクター的にも変わっています。例えば喜多烈斎なんか、1話の冒頭のシーンはあらくれっぽくなっていますが、今回はスキンヘッドじゃない侍です。」
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そして、ひとまず映像を通して一連の流れを見て行くことに。
その前に監督が目黒さんに一言。
「あの、これ実は『十兵衛暗殺剣』からイメージをいただいたものが多いんですけど。
漫画だから流してください(笑)」
「いっぱい見たような絵柄がありますから(笑)」とかずやさん。
『十兵衛暗殺剣』とは、目黒氏のお父上の近衛十四郎氏が主演されている映画。監督は、このシリーズから『十兵衛ちゃん』のインスピレーションを受けたそうです。ちょっとくらべて見てみたいですネ。
まず映像を流しはじめると、キャストの皆さんが軽く声をあてはじめました。
『一度だけ十兵衛に会ったことがある。初代柳生十兵衛に一度だけ・・・』
『柳生十兵衛です』
『喜多郎、きっとお前は十兵衛殿が好きになると思っておったぞ』
『十兵衛、なぜ北柳生まで呼んだ?』
『鯉之介、今にお前の時代が来る。剣が強くても何の役にも立たぬ時代がな・・・』
『おのれ!但馬守!』
『俺達は流れ流れてシベリアに着いた。』
『剣の時代はもはや終わりなのかもしれぬ。』
『北柳生新陰流ウリキスペツァーリナヤチェーフニカ!!』
『我が剣は天下一なり。北柳生こそが天下一の剣なり』
『それが、おやじをみた最後になった』
・・・・・・「というところですね。」とかずやさんが止めるまでコザルは呆然となって聞いていました。うわっ、すっご~い!カッコいいー-ッ!!軽くテストをしている段階なのに、色鮮やかに江戸の時代劇絵巻が繰り広げられる様子に、もう心底驚きました。いやあっ、大物の方はさすがに違うでヤンスよ、大将!!
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そのあと監督とかずやさんから細かい演技上の説明が入ります。
「目黒さん、十兵衛はこの間の1話よりも気さくな感じ、というか軽い感じがいいかなと思っているんです。『俺のは油断』っていうセリフも時代劇っぽくなく感じがいいですね。」
「ああなるほど。道場で門弟たちとやり合うくだりもそうですか?」
「そうですね。最初に道場にやってきた時も、『柳生十兵衛でっす』って(笑)。当時多分使われていない言葉なんですけど『交流会ですよ』とか現代ちっくな雰囲気で。」
「ははあ。」
「あ、でも親父殿とかや、弟子の鯉之介とかに『剣の時代ではない。』とか向かっている要所要所ではやはり武士らしく重厚にしたいんです。」
「そういう意味では周りの期待に反しては、型破りな感じなんですね。みんな弟子達が座布団を用意して待っているんですけど、それに座らないで『柳生十兵衛です』みたいな(笑)」と、かずやさんもアドバイス。
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次に、監督は竹内力さんに、「喜多烈斎の方は、侍らしく堅苦しい雰囲気になっていますので、少しセリフがゆったり目なんです。わりとビシっと重厚な感じです。」と話します。
「当主というか親分としての落ち着きがあります、息子の成長を見届けつつ。喜多烈斎と十兵衛はわりとお互いを尊敬しあういい関係なんですよね、好敵手というか。それが但馬守の政策云々で、十兵衛がやっつけに来たと誤解して、変な想念を抱いてしまうんですね。」
お互いが尊敬しあう間柄だったのに、但馬守の陰謀に巻き込まれ引き裂かれてしまう二人。このシーンをお互いを心から信頼してさわやかに演じれば演じるほど、後々の悲劇性がよりハッキリ感じられるのでしょう。
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「もう全然タイミング合わなくって。ものすごい難しいことをみんな習ってるんだね。」と目黒さん。そこへ大平氏、「外国映画とかの方が(吹き替えは)楽なんですよ。人間が芝居してるからね。これ(アニメ)はダメなんですよ。」
「ダメ!!?」と爆笑の監督たち。「あらっ言われちゃッた、ダメかあ~。」
「人間的な間合いがないから。でも、まあ今は機械が発達しているからある程度はね。」と大平氏に、
目黒さん「大平さんなんかこういうのが一番やりづらいのでしょうか?」
「いや、もう何でも。50年もやってるから。」
「あっ、それは失礼なこと言いました。」と笑いながら頭を下げる目黒さん。目黒さんは、昔スーパーマンのファンでいらっしゃって、まさか今回大平氏と共演出来ると思っていなかったととても喜んでいらっしゃるご様子でした。
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ひとしきりなごんだところで、お一人ずつ録音していくことに。
ここでブースには目黒さん、前田さん、たなか音響監督を残し、大地監督、長濱さんは調整室に戻ります。コザルも早目に来ていた恵里奈ちゃんと一緒に調整室に移動。
後ろから見学させていただきます。
喜多歩郎のセリフから、時を越え一気に300年前の道場へ。
『柳生十兵衛です。全国柳生の門弟諸君、今日はこの柳生十兵衛が僭越ながら手ほどきなどをいたそう。ふふっ。』
「道場がわりと広めだから大きい声を出して、元気で明るくって雰囲気がいいですね。声の出の感じはいいと思います。もうちょっと出してもいいかな。」と大地監督。「じゃあ、『柳生十兵衛です!!』くらいでお願いします。今のはちょっとまき目になってしまったので、今度は周りが緊張しているけれども、ゆったりした感じでいきましょう。」かずやさんが言い、録りに入ります。先程よりも大きな声で元気に十兵衛を演じる目黒さん。
さらに長濱氏の提案により、さらにひとつ若目・高目の調子でもう一本録ります。
そして、若々しい鯉之介が登場。かわいいっ!「この鯉之介ってのはすごい可愛がっている弟子なんです。腕はからっきしだけど(笑)だから『こいのすけくーん』ってすごい軽い感じで。」
今回の十兵衛はひょうひょうとした、優しい気さくな感じ。武士というよりも風来坊的なイメージを監督たちは求めているそうです。
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そして次は喜多歩郎との絡み。前田剛さんも一緒に演じます。
『その目は?』
『生まれつき・・・』
『ほぉ~俺のは油断』
喜多の片目なんですが、実は第1話で自由十兵衛を見る時に、グラサンの片目しか十兵衛が映っていないという仕掛けがあるんです。お気付きになられた方はスゴイですよっ!
「目黒さん、今向かい合ってる喜多ってのは一回りくらい下なんですけど、十兵衛は自分と対等にみているんですよ。『俺のは油断』のセリフもからかっているというか、ほぐしてあげる感じで、笑いが入るといいですね。」
「『名前は?』っていうのはちょっと優しく聞いてあげたらいいんじゃないですか。」
「で、『どーりで強いはずだ。』ってのも気さくな感じ。」
「最後の笑いをもっと長めに。」
「ちょっと一行目呆れた感じにしたいんです。『おまえはがむしゃらだなあ~』という感じで。」
「全体的には若めを意識してください。今ちょっと重厚になってしまいましたので。」
「『ガキの頃と同じだっ』っていうセリフも笑いを入れた感じで。」
大地監督と長濱チーフから次々とくるリクエストを全てクリアされていく目黒さん。
『いいか、“剣の道”は、“勝負”は心のものだ。』
『心のもの・・・?』
『ははははははははははははッ』
心の底から笑う目黒氏の声を聴き、「ふふっ」と泣きそうな監督。
「最高ですよ。俺、もう帰りたい。この余韻で帰りたい(笑)。すごいんですよ、笑いがもうお父さまと同じなのよ、面影があんのよ。お父さん見てるみたい。」
近衛十四郎氏の面影を目黒氏の中に見た監督は感無量。サングラスを取り、そっと涙を拭っていました。
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次は但馬守と十兵衛の親子の会話のシーンです。大平さんがブースに入ってきます。
「大平さんの但馬守はシルエットで処理されているから口があまり動きません。」とかずやさん。
「ここのシーンは思いっきりすごみを出してください。」と大地監督。
テストが始まりました。
テイク1、「十兵衛!なぜ喜多柳生まで呼んだ!?」と怒鳴りつけるような但馬守。「どっちかっていうと一発目、刀を磨きながら片手間で言ってるような感じでお願いします。」
とアドバイスをしてブースから出て行きかけた監督。その背中に「『十兵衛、なぜ北柳生まで呼んだァ』」と練習する大平氏の地の底から響くような声がっ!「こわい~こわい~」とびっくりしながら調整室に戻ってきた監督。あはははっ。
テイク2、「但馬守、もっともっと抑えてください。『北はいわば邪道』っていうのも張らない感じで。もう枯れはじめている感じ。今の感じだとまだ血気盛んな但馬守なんですが、むしろ世の中に対して疑心暗鬼で閉じこもったぼそぼそっとした雰囲気でお願いします。」
そしてラストテイクにて『十兵衛ェ、なあぜ北柳生まで呼んだァァ?』と薄暗いあんどんの光の中に不気味な但馬守像が浮かび上がりました。
「天下一の剣」の称号を守るための北柳生抹殺計画はこの頃すでに但馬守の脳裏にあったのでしょうか。そんな父の姿を見て、愛弟子に向かい一言。
『鯉之介、今にお前の時代が来る。剣が強うても何の役にも立たぬ時代がな・・・』
剣を捨てたいと願っている十兵衛だからこそ、剣を使えない鯉之介を誰よりも愛したのでしょうか。これにて9話の柳生十兵衛と、但馬守の録りは終わりました。
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6話のアフレコまでお二人には暫く休憩を取っていただく間に、竹内力さん、前田剛さんの喜多親子がブースに入ります。マイクに向かって「ヘイワンチューヘイ」とテストをする力さん(笑)。
第1話でアフレコに来られた時より、リラックスされていらっしゃるようです。そしてテストスタート。
『十兵衛殿がそう申されたか』
『はい』
『この喜多烈斎も一度交えてみたいものよ、天下一同志でな』
『はい!』
第1話の荒ぶる喜多烈斎とは違い、物腰の穏やかな、気品と強さを持った北柳生の頭領の姿がそこにはありました。監督や長濱さんも「いいですねえ。」と聞き惚れています。
テストが終わった後、「もう気持ち若くしてみましょうか。若くっていうか屈託のない感じで。」と竹内さんに話す二人。「前田君の喜多はどうですか?聞いてなかった俺。」かずやさん。すると「俺も聞いてなかった。」と長濱さん。「・・・俺も。でも大丈夫ですよ(笑)」と大地監督。御三方とも、ひどいっス(涙)。ちょっと悲しそうな喜多歩郎。「はい、じゃあ録音していきましょう。」ま、前田さんファイトですよお~!
この喜多親子の穏やかな語らいが終わると、場面はうってかわって但馬守の夜襲から逃げまどう一族の姿に。
「ここは思いきりやってください。1話でやったあれくらいの感じで。」
「少し火がボーボー燃えているので声ももう少し強めでもいいかもしれませんね。」
という言葉を受けて、力さん、ありったけの憎悪を込めて一言『おのれ但馬守!』!!
自身の政治的地位を守るために、他の柳生一族を陥れていく但馬守。その手は容赦なく喜多親子を北へ北へと追いつめていきます。一族の怨みと憧れていた十兵衛への懐疑と失望を抱いたまま、喜多歩郎は極寒の地で成長していきます。
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次はシベリアの地における親子の会話です。
「次のシーンは、以前やっていただいたのと時間が近くなっています。で、喜多郎も今の感じに近くなっています。」それを聞いてこちらを振り向く前田さん。あっ、ちょっと嬉しそうです!
その顔を見て「僕のことも見ててくれたんだね(笑)」と前田さんの気持ちをアテレコする大地監督。ええっ、ちゃんと皆さん聞いてますともっ、たまたまさっき聞いてなかっただけなんですよォ。
白タマ、黒タマを肩に乗せたスキンヘッドの喜多烈斎が『喜多郎、剣の道はもはや終わりなのかもしれぬ』と少々弱気な発言をします。しかし次の瞬間『・・・喜多郎、来い』と旅立ちを決意した息子に北柳生新陰流の最高奥義を伝授します。その名も「ウ・リキ・スペツァーリナヤチェーフニカ」!!
『ぬううううああああああ~~~!』吹きすさぶ氷原に喜多烈斎の渾身の叫びがこだまします。「ああ、いいですねえ。」と溜息をつく監督たち。
「ちょっと前田君、技名を竹内さんに教えてさしあげて。」
「あ、はい。えっとウリキスペツァーリナヤチェー・・・」
「ちょっと今の叫びもう一回やろうかな。」
ああっ!!力さんまでもが聞いてらっしゃらない(涙)。今日はさびしい前田さん。
ファイトッ!
ううううううあああああああああ~~~!!』とここまではカッコ良かったのに
『う~りきすぺちゃ~りなやちぇ~ふにかあ~~~』とグニャグニャしながら言う力さん。「それもいいなあ~」爆笑する大地監督。
かずやさんと前田君で再び技名のレッスン。
「ウ「リキ」を強調してください(笑)。ウリキ・スペツァーリナヤチェーフニカ」
何だか語学の授業みたい。
すると力さん、こちらを向き片手を腰に片手を斜めに伸ばし「ウリキ・スペツァーリナヤチェーフニカ」
ウハハハハっとポーズ。ぎゃはははっ♪
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「じゃあ、続けて一回やってみましょうか。」かずやさんの合図で始まります。
『北柳生新陰流、ウリキ・スペツァーリナヤチェーフニカァァァァ!!』
『すげえ・・・』
『我が北柳生こそ、天下一の剣なりィ。』
「完璧・・・」と呟く長濱さん。
直後に「ぬはあ」と笑う力さん。余裕の喜多烈斎、何とアドリブを入れられましたっ。
「すっげえいいですよ!!パーフェクトです!!喜多郎と同じ声が出ました。『すげーっ』て(笑)最後、『ぬはあ』ありでもいいです。」と興奮する大地監督。
「いやむしろあった方がいいです!」かずやさん。音響監督により笑いアドリブ、採用!
「でもスペツァーリネァーとか言っちゃいましたよ。」という力さん。
「全~ぜん気づきませんでした。」と監督「そういう発音だと思ってました。」(笑)
そして最終本番は、これらをさらに上回る素晴らしいパワーで演じてくださいました。
これにて喜多烈斎の9話も終了!
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引き続き6話の抜き録りに入ります。
目黒さんがブースに戻られ、第1話冒頭、氷原の戦いのシーンを再現することになります。
シベリアの地にて仲睦まじく歩いていた十兵衛、フリーシャ、トゥルーシャの親子は積年の怨みを抱いた喜多烈歳ととうとう邂逅してしまいます。
『十兵衛っ』
『喜多烈斎殿・・・!』
目黒さんが監督に質問をされます。「この最初の『喜多烈斎殿・・・』はびっくりしてます?」
「はい、もうかーなーりびっくりしてます(笑)同じシベリアに来ているのは分っているんだけど、まさかもう会わないだろうと思っていたから、本当に驚いてますね。」
「喜多烈斎ははもっと遠い所から呼び掛けていますので、距離感を出してください」
とのリクエストにすかさず答える竹内さん。『十兵衛ェェェェェ!!』
「ああ、完璧ですね。」と長濱氏。「最高ですね。」と監督。
この一言から第1話冒頭の決闘の火蓋はきられフリーシャの悲劇もまた始まるのです。
そしてこの叫びを持って本日の喜多烈斎の収録は終わりました。力さん、本当にお疲れさまでした!!
ありがとうございました。
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そして、残りの十兵衛の収録はまだ続きます。
「たなかさん、フリーシャ入れましょうか。」おおっ!親子共演!
「はいはい、でも大丈夫ですよ大地さん。以前録った音があるから。」というかずやさんに、「一緒にやるのを見たかったんだぁぁ」と足をばたつかせる大地監督。
というわけで恵里奈ちゃんがブースに入る。いってらっしゃい~~♪
「よろしくお願いします。」とエリナちゃん。
「こんな可愛い娘がいる」と目黒さん。そのほほえましい光景を見て嬉しそうな大地監督。
ここは幼年時代のフリーシャが父の眼帯に一度だけ触れる想い出の一場面。無邪気に片目のわけを聞くフリーシャの言葉に、十兵衛自らも父・但馬守を思い出すシーンです。
「但馬守に片目をやられる少年時代の十兵衛というのは・・・?」と訊ねる目黒さん。
「もう録ってしまいましたよ。子供時代は。」と答えるかずやさん。
「・・・・・・無理だもんね。」と目黒さん。
「あっ、目黒さん、やる気まんまんですよっ(笑)!」というかずやさんに、すかさず「一応やってもらったら(笑)。」と大地監督。
「いやいや(笑)、どうするのかなあと思ってました。」と照れ笑いをされる目黒さん。聞いてみたい気もします、ものすごーく。
それではフリーシャを交えてこのシーンのテストが始まります。
『パーパ、どうしてこっちの目隠してるの?』
『ん?』
『パーパの・・・パーパとの思い出なんだよ』
『パーパの・・・パーパ?』
『ああ・・・パーパの剣の先生でもある・・・』
『剣?』
『あ・・・いや・・・なんでもないなんでもない・・・あはははははははは』
「ああ~いいなあ~」とじ~んと感動する大地&長濱コンビ。
「普段、その声なの?」と聞く目黒さんに「あ、いえ、違います。」と照れるエリナちゃん。
「親子同じブースに入った方がいいですよね。いい感じです。」と長濱さん。うんうん、本当にその通り。ブースのガラスを通して、あたたかく柔らかな雰囲気が伝わってきます。
十兵衛がなにげなく口にした「剣」という言葉に興味を示す幼いフリーシャ、しかしそれは父の望みではありません。但馬守との思い出は剣を通して以外にはなかったが、この子には願わくばそのような生き方はさせたくない。だから十兵衛の言葉は次へこう続くのです。
『フリーシャ・・・お前は剣など知らずに生きろ・・・父も出来るなら剣を捨てたいと願っているのだが・・・』
ああ、しっとりとして何ていい声・・・と聞きほれる一同、そこへ突如「ぐうぅ」と奇怪な音が!
続ける目黒さん。『・・・だがっ(笑)・・・長年みにしみついてしまったこの習性はははっはっはっ』ああっ!とうとう堪えきれず笑い出した目黒さん。今の音の正体は!?
・ ・・・「僕のお腹が出演してしまいました。」とかずやさん。あはははっ!!
「ほんっと申し訳ないっ。」と頭を下げる音響監督に「結構うるさいの(笑)」とツッコむ目黒さん。「はははっ言われてる」と長濱氏。「ああ、今めっちゃよかったのに。
めっちゃいいところだったのにィ」と笑いながらも口惜しがる大地監督。
みんな思いっきり笑い終わった後、気を取り直してもう一度録り直し。
『だが、長年身にしみついてしまったこの習性を・・・ぬぐい去ることは出来ぬのかもしれぬ。』
「ああ、いいですねえ。ありがとうございます。でもさっきの笑う前の『・・・だが』
までを使いたいなあ、俺。」
「ははっはっ」苦笑するかずやさん。
「いい雰囲気だったのに、笑いはじめたからびっくりしたんだけど。」さらに続ける大地監督。
「すまんっ」
「もう、『だが』から笑いはじめてますからね。」と長濱氏。
どこまでもいぢめられる音響監督なのデシタ(笑)。
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かずやさんがいじめられている傍ら、目黒さんと恵里奈ちゃん
「いくつ?」
「16です。」
「声優としては?」
「これが初めてです。」
と和気合々と親子の語らいをしております。ほほえましいなあ。
「今、フリーシャに『生きろ!!』って呼び掛けみたいになっていますけど、これが『生きろ・・・』という十兵衛の願いのような感じで言っていただけたら。」とリクエストする長濱氏。
「このセリフはその想いを抱きつつ、演技的にはそんなにためない。あっさり目がいいんです。あまり強くフリーシャに訴える感じではない。ネタをばらすと、フリーシャはこの言葉をこの時点では聞き流しているんですけど、最後の戦いの肝心な時にこのセリフを思い出すんですね。だからわざと協調しない方がいいかな。」大地監督。
「もう一つ言えば、さっきの(笑う直前の)感じがすごく良かったです。」
「さっきのなんだっけ、はははっ。もう3歩歩くと忘れちゃうからなあ。」と笑う目黒さん。
ラストテイク。
『剣など知らずに生きろ』
果てしないシベリアの空を見上げ、ぽつりとつぶやく十兵衛の複雑な心をみごとに演じていただきました。
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次は畑仕事をしている時に、飛びかかってくるフリーシャをはらいのける十兵衛。
なお向かってくるフリーシャを抱きとめるその顔は哀しみを含んだ喜びに満ちています。
『フリーシャ、お前はやはり父の子だ。この柳生十兵衛三厳のな・・・』
「うおおおおおおー」としびれるたなかさん。
「いいですねえ。なんか哀し気に聞こえるのが。」長濱氏。
最後は荒野に立つ柳生十兵衛。フリーシャが物陰から見ているのに気付かず、剣をふるいます。この映像を見た目黒さん、一言。
「飛び上がってますねえ。アニメのようだな。」(笑)
「最初の剣を抜くところに大きな気合いを入れて、着地の時も一発入れて、その後、アップになったら『ふぅぅぅ』って息を抜く感じを。」と細かく演技のリクエストをする長濱氏。
「はっ、うりゃーっ、でぇいっ」と気合いを込める目黒さん。
「うおっ、キタキタ~」またまたシビレるかずやさん。
そして、息を整えている最中に幼いフリーシャに見られてしまったことに気付き、『フリーシャ・・・』と驚きの一言。『フリーシャ・・・見てしまったのか・・・』それは「剣」への憧れがフリーシャの小さな胸に芽生えた瞬間でした。そして、父のようになりたい、父の名前を継ぎたいという強い想いを、後年彼女は抱え、成長していくのです。
これで、本日の目黒さんのパートはすべて終了いたしました。目黒さんも長い時間本当にお疲れさまでした。そして、あたたかく優しい、若き日の十兵衛を見せていただき有難うございました!
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最後は6話の大平透氏の但馬守のパートを録ります。
「さっきの9話と随分違っちゃうねえ。」
「はい。疑心暗鬼にもなってない若かりし頃です。」とかずやさん。
「よけるだろうと投げた手裏剣が当たってしまった。驚きをそのままセリフにお願いします。」
「ああ、分かりました。」
映像が流れます。
『十兵衛っ!!』
『もうよいっもうよいのじゃ十兵衛っ』
たった二言でしたが、明らかに先ほどの非情で不気味な但馬守と違い、そこには息子の成長を見守り、気遣う人間らしい父親の姿がありました。そして、息子を抱きすくめる姿は、先刻のフリーシャを抱きとめる十兵衛の姿に重なります。
「うわっ、いい~!」と長濱さん。「はい!OKです。」
大平透氏のアフレコも終了し、これにて、本日のゲスト3人の収録はすべて終了いたしました。
大変長い時間、お疲れ様でございました。それぞれが真剣に役に取り組んでいらっしゃる姿を見学することが出来、素晴らしい経験となりました。有り難うございました。
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そして20時過ぎからいつものメンバーがブースに入り、残りのパートを録っていきます。
自由の『あるこーあるこー』の歌は、「ちょっと音痴にしてください。あのまんまのメロディーで歌うとダメなんで(笑)」とかずやさん。一生懸命自分を奮い立たせる自由。
堀江さんが調整室に声を掛けます。「すみません、台本では『20引く7・・・10の位から10借りてきて・・・』ってなってるんですけど、第1シリーズのビデオ観たら20じゃなくて16だったような気がするんですけど・・・」
「えっ!?あっ、そうかも。ちゃんと観てなかったぁ」って、監督ゥ!
最後に前田さんの喜多歩郎のモノローグを収録して、本日のアフレコは終了しました。
前田さんは今日は大変でしたね、イロイロと(笑)。
「いつも僕は叫んでばかりだから、今日は叫びじゃなくて、淡々と喋るから難しかった。」と仰っておりましたが、そんな様子は微塵も見られませんでしたよ。
今日は、十兵衛とフリーシャ、十兵衛と但馬守、喜多烈斎と喜多歩郎という3組の豪華な親子共演が実現出来て素晴らしいアフレコでした。そして300年前の悲劇と現代を結びつけるドラマティックな回だったと思いますが、いかがでしたか。
色々な場面を飛び飛びで収録していきましたので、少々読みにくくなっているかもしれませんが、最後までお読みいただき有り難うございました。それではまた♪
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